2017年3月1日(水)12時41分

【英語版ジャンプコミックスが日本で配信!】どうやって作っている?アメリカのジャンプ編集部に迫る!! 前編

ことの発端は、昨年の12月――ジャンプフェスタ開催中のこと。我々ComicSync編集部は、JF会場で得た数々の情報をできる限り早く報告するべく、シャカリキになってサイトにアップし続けていた。中でも、「『NARUTO-ナルト-』ハリウッド映画化!」の超ビッグニュースは、どこよりも早く報じようと超スピードで動いた!……だが。
スクープ最速アップの座は、見知らぬTwitter投稿に奪われてしまった…。しかも英語のアカウントに…!

英語版の「SHONEN JUMP」を制作している「VIZ Media」_Twitter
やられた―!

ちなみにComicSyncの記事はこちら。
『NARUTO-ナルト-』がハリウッドで実写映画化決定!! ――ジャンプスーパーステージ速報!

ちっくしょーいったい誰よ!?…と悔し涙を拭きながら調べてみると、英語版の「SHONEN JUMP」を制作している「VIZ Media」という会社の人らしい。
VIZ…どこかで聞いたような? あ、そういえばComicSyncのこの記事に!

この人たちか! この記事にも書かれているが、どうやらVIZ Mediaというのは、アメリカで英語版の少年ジャンプ「Shonen Jump」の制作や、日本の漫画を英語に翻訳して出版・配信している会社。

英語版の少年ジャンプ……ほほう、これは俄然興味が湧いてきた!
そうして調べを進めていくうちに、関係者とインターネットTV電話で話を聞けることに!

アメリカの人かーと、ドキドキしながら通話してみると、あれ?
日本人! というかどこかで見たような……あ!
『バクマン。』にも登場したことがある、週刊少年ジャンプ元編集長 佐々木さんじゃないですか!

そうか! 「マンガは面白ければいいんだ」でおなじみの佐々木さんが英語版の少年ジャンプにかかわっているのか…これは面白い話を聞けそうだぞ!

●世界に向けてジャンプを作っている!

VIZ Media社内の佐々木さんの机

VIZ Media社内の佐々木さんの机。スペースはゆったりしているが、雰囲気は日本のジャンプ編集部と変わらない? 会社はサンフランシスコにあるぞ。

――最初に訊きたいんですけど、佐々木さんは、アメリカでどんなことをしているんですか?

佐々木さん:仕事の中心となるのは、少年ジャンプの英語版の世界市場への浸透の戦略を立てたり実行していくことですね。そのほかに、新しいタイトルの導入だったり映像化企画にあたっての、日米双方での窓口的なこととか、日米間のジャンプに関わることにはなんでも関わってますよ。

――つまり、世界をまたにかけてジャンプを広めているってことですか…す、すごいですね。ところで、少年ジャンプの英語版を作っているというアメリカのジャンプ編集部って、具体的にどんなことをしているんですか?

佐々木さん:私は実際の制作作業に従事してませんが、スタッフの皆さんは本当に大変だと思いますよ。毎週、日本でジャンプの校了(校正が終わって印刷が可能になること)が済んだ作品から、順に漫画のデータがアップロードされてくるのを、サイマル(同時)配信に間に合うよう、翻訳→校正→ファイル化という流れで、大急ぎで作業をして、毎週月曜日に英語デジタル版少年ジャンプを配信しているんです。

――月曜って…もしかして日本の少年ジャンプと同時に英語版を配信しているんですか!

佐々木さん:そうです。

左がアメリカ版、右が日本版のジャンプ
↑左が、アメリカで日本と同じ毎週月曜日に配信される、英語版SHONEN JUMP。右が、同じ号の日本語版。

――早っ…というかかなり大変なのでは…?

佐々木さん:ええ。何しろ毎週毎週、限られた時間の中で、セリフのニュアンスを漫画家さんの意図通りに、正確な翻訳をしなくてはならないんです。作品ごとに翻訳者は決まっているんですが、漫画特有の言い回しとかもあるので、その作品をよく理解してファンでもある方にお願いしています。新しいタイトルがどんどん増えてきているので、対応するのが大変ですね。

――うわあ。言葉だけでなく、相当漫画をわかっていないとできない作業ですね。そんなすごい人たちがいる編集部は、何人ぐらいの規模なんですか? 

佐々木さん:雑誌のスタッフは編集長のアンディさん含めて4人。そのほかにマーリーンさんや高田さんのように、周辺を支えていただいている方たちがいます。

――編集部の雰囲気ってどんな感じなんですか?

佐々木さん:みんな仲良いですよ。VIZは100人ちょっとの社員が全員同じ場所にいる会社なので、コミュニケーションもバッチリです。

●漫画をMANGAに!

――VIZ Mediaは、少年ジャンプ以外にも、コミックスの英語版も作っていますよね。どういった手順で作っているんですか?

佐々木さん:このへんの話は「SHONEN JUMP」編集長のアンディさんから説明してもらおうかな

「SHONEN JUMP」編集長のアンディさん

アンディさん:よろしくお願いします! 「SHONEN JUMP」は、だいたい刊行される5~9日前に、日本からオリジナルのデータが届きます。それを見てフリーランスの翻訳担当の方がセリフを英語に翻訳してくれます。編集者が翻訳を確認したら、次はフリーランスのletterers(セリフの文字をフキダシにおさまるようにデザインする人)に渡します。ファイルが文字入れの人から戻ってきたら編集部でチェックして、そこで修正があれば改訂されます。
そして、そのプロセスと並行して、デザイナーが表紙や他のページの作業をします。こうやってすべてのページが出来たら、ひとつにまとめて、全ページをジャンプチームの全員で校正し、修正されて1冊の本が完成します。

――フキダシに文字を入れる専門の人がいるんですか! 確かに縦書きの日本語が入っていたフキダシに、横書きの英語をおさめるのはテクニックがいるかも…。あと気になるのは、ジャンプマンガには技名とか、英語の存在しなさそうな固有名詞がたくさんありますよね。ああいうのはどうやって訳を決めているんですか? 結構大変そうな気がしますが…。

アンディさん:そうですね。固有名詞の翻訳は、難題になる時があります。また、たまに絵の中の標識やTシャツなどにローマ字があったりしますが、そういうのもどうするか悩むことがありますね。とにかく、できる限り作者の意図に近づけるように努めるのが第一です。その固有名詞の由来が現実世界の何かからなのか、それとも神話などからか、いろいろ調べたりしながら決めていきます。日本の編集部からアドバイスをもらったりすることもありますよ。

『僕のヒーローアカデミア』1巻_日本語版
『僕のヒーローアカデミア』1巻_英語版
↑『僕のヒーローアカデミア』1巻より。上が日本語版、下が英語版。フキダシのスペースを上手に活用し、英文を横書きで流し込んでいる。1コマ目の「バーン」という描き文字が「BA-M」に描きかえらえていることにも注目。

――マンガだけでなくいろいろ知ってないといけないんですね。普通のセリフでも翻訳するうえで難しいことや困ったりすることはありますか?

アンディさん:オリジナルの日本語の意図をできる限り維持しながら、英語の読者にできるだけ読みやすくなるように気を付けているんですが、時には、どちらかのレベルを維持するためにどうしても一方を犠牲にしなければならないこともあります。特にギャグはとっても苦労しますね。
また、日本語の文章は主語を省いていることが多いうえ、主語や目的語の性別を特定せずに表現できるので、「誰なのか」とか「性別がどちらなのか」というのを明らかにせずに話すことができますが、それを英語にする時は工夫が必要になりますね。

――そうか、日本語ならわざと「彼女は」とか「彼女に」みたいな言葉を省略して、後で「女性だったのか!?」みたいな展開がやりやすいけど、英語は省けないですからね…。そんな言葉の壁を乗り越えて、ジャンプマンガを世界に配信しているんですね。
アンディさん、ありがとうございました!

●アメリカマンガ事情

――アメリカで売られているジャンプコミックスなどの日本のマンガは、プリント版(紙の本)とデジタル版はどっちが主流なんですか?

佐々木さん:売り上げ的にはプリント版の方が大きいですが、デジタルの売り上げも順調に伸びていますよ。

――なるほどー。でも、紙のジャンプの英語版のコミックスって、普通に町の書店とかで買えるんですか?

佐々木さん:書店自体が日本に比べて少ないんですが、『Barnes & Noble』や『KINOKUNIYA』など、大手書店には大きな棚があります。

アメリカの書店の本棚

――アメリカの書店にジャンプコミックスの棚があるのかー、なんか嬉しいなあ。そういえば、『DRAGON BALL』や『NARUTO-ナルト-』が海外で人気なのは有名ですけど、最近アメリカで人気急上昇のジャンプタイトルを教えてください。

佐々木さん:『僕のヒーローアカデミア』や『ブラッククローバー』、『食戟のソーマ』あと最近は『約束のネバーランド』も人気です。

僕のヒーローアカデミア、ブラッククローバーの英語版コミックス
↑僕のヒーローアカデミア、ブラッククローバーの英語版コミックス。ロゴや表紙デザインも英語版にアレンジされている。

●英語版ジャンプコミックスが日本で!

――英語版のジャンプ作品、なんだか読んでみたくなってきたぞ。佐々木さん、日本で英語版のジャンプコミックスって読めないんですか?

佐々木:実は、英語版の電子コミックスが日本でも配信されることになりました。

――おおー!マジですか! でもなんで今回日本での配信が決まったんですか? あと英語版のコミックスは全部読めるんですか?

佐々木:もともといずれは英語版のコミックスを全世界に配信したいと思っていて、できるところからすこしづつ広げていっているんですが、今回、日本にいる外国の方や英語に興味のある日本の方による一定の売り上げが見込めると判断して、日本を追加することになりました。全部ではありませんが、VIZが英語版を出版しているタイトルはほとんど日本で購入できるようになりました。

amazonkindle(日本)の英語版ジャンプコミックスラインナップ
↑amazonkindle(日本)の英語版ジャンプコミックスラインナップ。日本の電子書籍ストアで、英語版のコミックスが購入できる。

――それは楽しみです! 何度も日本語で読んだマンガなら、英語版でも内容はわかるし、勉強にもなるかも!

というわけで、英語版のジャンプコミックスの電子版が日本のストア(iBooks、amazonkindle、kobo)でも配信されることになったのだ!(※2017年2月中旬時点での配信ストアです。今後変更がある場合もあります。また、書店ごとに価格が異なる場合があります。)

――日本での英語版ジャンプコミックスの配信を果たした佐々木さんが、今後VIZ Mediaでかなえたい野望はなんですか?

佐々木さん:最終的には、世界中で月曜日にみんながジャンプを読めるようにすること、それが目標です。

――世界のみんなが同時に同じジャンプを読める…それはすごい! そんなワールドワイドな仕事をしているアメリカのジャンプ編集部について、もっと知りたくなってきたぞ! たとえば現場のスタッフってどんな人たちなんですか? どんなふうに仕事しているんですか?

佐々木さん:じゃあ本人たちに聞いてみたらどうです?

――え? いいんですか!?

というわけで、後編はアメリカのジャンプ編集部の人たちに、根掘り葉掘り聞いてみるぞ! Don’t miss it!

【英語版ジャンプコミックスが日本で配信!】どうやって作っている?アメリカのジャンプ編集部に迫る!! 後編はこちら

SHONEN JUMP英語版公式ページはこちら