2017年4月28日(金)11時55分

『帝一の國』作者・古屋兎丸先生&担当編集インタビュー祭partツー!『帝一の國』誕生秘話&作家・古屋兎丸と「ジャンプSQ.」との出会い…担当編集かく語りき。

4/29(土)から実写映画『帝一の國』全国公開を目前に控えた、ある春の昼下がり。麗らかな春の日差しを受け付けぬ妖しく芳しい地下2階のある画廊にて、その密談はひそやかに行われていた。

帝一の國_原画展

「じゃあ次の質問ですが…先生と担当編集の小菅さんを『帝一の國』キャラに例えると誰だと思いますかあ?

エッ? ぼ、僕と小菅さんですか? そ、そうですね…(しばし熟考)…小菅さんは体育会系なんですよね……あぁ、あと大らかなので、弾ですかね。僕は……(しばし熟考)…森園かなあ。色々考えて準備するタイプだから。…いや、そうでもないかなあ?」

先生が森園先輩で、小菅さんが弾…?

森園先輩_大鷹弾
森園先輩_大鷹弾

…キュン
「今何か言いました?」
「いえ」
「ああ…でもやっぱり、僕は主人公の帝一に近いところもありますね」

赤場帝一_大鷹弾
赤場帝一_大鷹弾

キュン
「今何か言いました?」
「いえ。あっ、噂をすれば小菅さんから後半インタビューOKのお返事メールが来ました! 早速行ってまいります! 先生、個展、また来ますね~~~!」
「えっ? あっ、あっ…」

担当編集が語る・古屋兎丸と「ジャンプ」との化学反応

…ということである春の昼下がり――銀座・ヴァニラ画廊にて5/7(日)まで開催中の「実写映画『帝一の國』公開記念 古屋兎丸原画展」に在廊されていた(時に捕まえた)古屋兎丸先生に別れを告げ、再び集英社会議室にて『帝一の國』担当編集・小菅さんと再会し、もうひとつの密談を再開した!!
★原画展については、こちらの記事でもくわしく紹介しています★

――ちょっと小菅さーん! ひどいじゃないですか、さっきは急にどこか行っちゃって…

小菅:個展どうでした?

――(聞いてない!)個展…は、最高でしたけど…

小菅:よかったよかった! 販売されているグッズも先生が監修されて、素敵な出来栄えでしたでしょう。映画の衣装や小道具も飾ってあって、見どころたくさんなんですよねえ。あ、先生とお話できました? 先生も物腰がすごく柔らかくて、素敵な方で…、

――その、先生の話、ぜひ詳しく聞かせてください!! もともと、小菅さんはいつから古屋先生のご担当だったんですか?

小菅:先生の「ジャンプ」誌初登場になる、前作『幻覚ピカソ』からです。

幻覚ピカソ
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小菅:あの作品が始まったのが、「ジャンプSQ.」が創刊して間もない頃だったので、もう9年ほど前かな…?(「ジャンプSQ.」は2007年11月創刊、『幻覚ピカソ』は2008年10月号より連載開始) 当時、有名作家さんに読切作品を描いていただくシリーズをやっていたんです。古屋兎丸先生の作品をすべて読んだうえでぜひお願いしたいと思い、先生に僕からご連絡差し上げました。

――では、最初は読切作品を描いていただくご予定だったんですか?

小菅:ええ、まずは読切のつもりでした。当時は、「週刊コミックバンチ」さんで連載されていた『彼女を守る51の方法』が終わったばかりだったでしょうか。というのももちろん、先生の空きタイミングを計っていたんですが(笑)。僕はもともと兎丸先生の、『Marieの奏でる音楽』という作品がすごく好きで。“こういったものを読切で、「ジャンプSQ.」に描いていただきたいんです”と話をしに行ったんです。

――古屋先生の作品が、もともとお好きだったんですね。

小菅:もちろん。『π(パイ)』は学生時代に読んでいましたし、先生の初期作品の『Palepoli』や『ショートカッツ』なども拝読していました。


少年少女漂流記

↑ちなみに古屋兎丸先生の集英社既刊には、作家・乙一先生と共作した『少年少女漂流記』も。昏く美しい若者たちの妄想を描く、新しい“青春”のバイブル。

小菅:ほかにも先生の代表作には、少年たちの狂気を描いた『ライチ☆光クラブ』というものもあるんですが、それは「ジャンプSQ.」でやるには刺激が強いだろうと思ったんですね。そうしてご相談していたら先生が、「ジャンプ」と名の付く雑誌に載せるのなら…と、“友情・勝利・努力”そして“内気な少年”…などをテーマに、読切を描くと言ってくださって。

『幻覚ピカソ』主人公の葉村ヒカリ
『幻覚ピカソ』主人公の葉村ヒカリ
↑『幻覚ピカソ』主人公の葉村ヒカリ…通称「ピカソ」は絵が好きで内向的な(かつ、一癖も二癖もある)少年。

――先生は最初から、「ジャンプSQ.」での作品掲載に前向きでいらしたんですか。

小菅:そう感じました。『幻覚ピカソ』最終巻のあとがきでも先生が描いてくださっていたんですが…先生はもともと「ガロ」さんなど、より個性的な雑誌などで活動されていたかたなので、戸惑われる気持ちもあったと思います。ですが…「兎丸先生らしさを思いっきり出してください」と申し上げたことで、先生のお好きな要素もめいっぱい入れた作品を、と考えてくださったみたいです。

――初対面の先生の印象はどうでしたか?

小菅:いやぁ…すごい優しい人だなと。最初の印象としては、すごく雰囲気が柔らかいんですよね。その上でやはりどこか才気走っている。“才能”の塊のように見えました。

――それではその出会いの後、作品制作は順調に進み…?

小菅:そうですね。できあがった『幻覚ピカソ』の読切を当時のジャンプSQ.編集長に回した時、出来がすごくよかったので、「読切ではなく、8回くらい連載でどうですか」と上にアピールしたんです。そうしたら「いいんじゃない?」と“GO”が出たので連載として走っていくことになりました。

――読者の反響はいかがでした?

小菅:ジャンプSQ.に掲載する読切や連載作品は、当時雑誌の創刊当初ということもありみんなすごく気合が入っていましたけど、やはり兎丸先生ほどの作家性の強さがあると際立って目立つのか、読者の反応もすごくよかったです。兎丸先生のほかの作品と比べると、一見した時の印象が明るく爽やかですし、既存のファンにとっても意外性があったかもしれませんね。他にも制作にあたっては、先生がものすごく色々な実験をしているので、ぜひ読んでみてください(笑)。『幻覚ピカソ』は1~2話完結のスタイルでつくっていったので、毎話にドラマがあって、泣きどころがあって、そういった面もぜひ楽しんでいただければと思います。

幻覚ピカソ
↑唯一の理解者だった友だち・千明を、突然の事故で失ったピカソ。
幻覚ピカソ
↑天使の姿となって表れた千明は、「人助けしないと腐って死ぬ」とピカソに告げる。
幻覚ピカソ
幻覚ピカソ
↑事故をきっかけに、ピカソは悩みを持つクラスメイトたちにそれぞれ異なる「絵」が見えるようになる。
幻覚ピカソ
↑絵の中=本人の深層心理に“ダイブ”して、それぞれの悩みを解決しながら、ピカソ自身も周りと関わり、変わっていく…不思議でポジティブ、それでいて切ない、少年の成長譚。

小菅:そして、『幻覚ピカソ』は順調なまま最終的にコミックス3巻で完結して…。3冊は短いと思われるかもしれませんが、打ち切りでもなんでもなくて、予定終了でした。とはいえ、単行本1冊1冊が普通のコミックスと比べてめちゃくちゃ分厚いのでお得ですよ!(笑)

『帝一の國』海帝高校には、モデルが存在した!?

――そしてその後、ついに次回作…『帝一の國』の制作に入っていくわけですね。

小菅:ええ。『幻覚ピカソ』の終了が見えていた頃と時を同じくして、「ジャンプSQ.19」という増刊をつくろうという話がありまして…先生に「新創刊のその雑誌に、何か連載お願いできませんか」という無理やりな依頼をしにいったんです。

――「無理やりな」と言うと、唐突なお願いだったんですか?

小菅:発売まで数か月しかない、くらいのタイミングだったかな(笑)。それでも引き受けてくださったので、内藤泰弘先生の『血界戦線』と、兎丸先生の『帝一の國』が「ジャンプSQ.19」の目玉となりました。

――『帝一の國』は最初、どういった作品にしようとお考えだったんでしょうか。

小菅:新連載をつくっていきましょう、となった時に僕からリクエストしたのが…「『幻覚ピカソ』よりも、先生のもっとドロドロした部分を出してほしい」、ということでした。また、先生がもともと好きなもの…先生ご自身のテーマでもある「少年たちのバトル」、そして唇にトーンを貼ったりするような「耽美的」な要素も、先生の思うように、と。

帝一の國
帝一の國
↑弾の魅力を知るからこそ認められない帝一。複雑な感情が闘いを生む。
帝一の國
帝一の國
↑帝一と光明の仲睦まじさ、また選挙戦の中で帝一と氷室に芽生える上下関係を超越した繋がりも、ある種耽美的。
帝一の國
↑謀略うずまく争いの中で、並々ならぬ憎しみが生まれることも。ドロドロの感情も糧にして、少年たちはさらなる闘いに向かっていく。

小菅:そして、…これは僕のほうの事情でもあるんですが、当時、別で進めていた新選組の漫画の企画が立ち消えてしまったんです。なので個人的な希望も含めて、「新選組みたいなのをやってくれませんか」とご提案したのを覚えています。「“男同士の争い”を!」…と。そうしたら、先生は先生で、映画の『白い巨塔』がすごくお好きで。

――“THE・権力闘争”ですね!(笑)

小菅:権力闘争から、学生…学生服…男子校…という風に話が繋がっていったんです。それで、海軍士官学校とか、軍兵の訓練校といった、男子まみれの学校をテーマにしようかとなったんですが…。奇しくも僕の母校も、ゴリッゴリのガッチガチの男子校だったんですよ(笑)。

――あれっ? 急に汗の香りがしてきました。

小菅:僕が通っていた都内のS学園という中高一貫の男子校が、まさしく、舞台にしようと話していた男子校そのもの(笑)。白いふんどし一丁で日本泳法で泳がされる楽しいイベントや、徹夜で山越えをする素敵な催しなどがあったんですけど(笑)。

――ふんどし山越え…?

魁!!男塾
魁!!男塾

――宮下あきら先生による不朽の名作、『魁!!男塾』の話ですか?

小菅:現実です。少しでも材料にしてもらえればと、そういった学生時代の出来事を兎丸先生にお話ししたりしましたね。元担任の先生に入学資料を送ってもらって、先生に参考までにとお渡ししたり…。ちなみに、僕の母校の制服は海軍のものを参考にしているのですが、それも実は『帝一の國』海帝高校の制服に繋がっていたりして。

帝一の國
↑帝一たちが着こなす、蛇腹ホックの詰襟制服。

――エー! じゃあ、見る人が見たら…

小菅:絶対わかります。…学校名は伏字にしてくださいね!(笑) …他は大丈夫だと思う…うん…大丈夫…悪いことしてない!!(笑) 校訓や生徒会の規約文なども参考にさせてもらえればと思い、「生徒手帳も参考にしたいから送っていただけませんか?」って先生に言ったら、「小菅君、それは守秘義務があるから渡せない」ってそこはちゃんと断られたから! 大丈夫!(笑)

――(ホントかなぁ)何はともあれ、制作日数のない中で、小菅さんのリアルな経験譚が『帝一の國』の熱い“男子校”描写の支えになったんですね。ではそのまま、連載のスタートも順調に?

『帝一の國』に顕われる“鬼才・古屋兎丸”の凄み

小菅:いやいや。やはり時間がなかったので、1話目はもう、見切り発車で。先生は本来、先々の構想までしっかり決めたうえで始めるかたなんですが、『帝一の國』は描きながら構想を深める形で進めてくださって……兎丸先生は本当に「巧い」と感服いたしました。…ちなみに1話目だけ読むと、光明が悪の黒幕っぽく見えるでしょ?(笑)

帝一の國
↑初登場時の光明。帝一のそばで、妖艶な微笑みを湛えていた。

――確かに読んだ時、「これ絶対悪いこと考えてるやつの美しさだ!!」と思いました(笑)。

小菅:描きながら考え進めていった『帝一の國』は、兎丸先生の中でも最長の作品になりました。でもその過程で物語のテンションを下げることもなく、伏線をしき、そしてそのすべてを回収しながら、絵的な実験も繰り返しながら、回を重ねるごとに面白さを増していった。…ギャグも振り切っているじゃないですか?

帝一の國
↑帝一のピアノ演奏シーン。流れ出す音色が帝一を取り巻く描写の美しさによって、その演奏の秀抜さが読者に伝わる。
帝一の國
↑人物部分と背景部分とで異なる質感と大胆な描き文字が、読者にインパクトを与える見開きページ。最終話まで、見ごたえのある画づくりは貫かれた。
↓一方、作中で誰もが“真剣勝負”をしている『帝一の國』では、それぞれの図抜けた真剣さがおかしさにもなる。
帝一の國

帝一の國

帝一の國

帝一の國

小菅:本当に高い次元で、兎丸先生の作家としての“凄み”が発揮されて、しかも綺麗に完結した漫画作品になったんじゃないかなと思います。

――では連載にあたって、小菅さんから先生が出してきたものにボツを出す、ということはあまりなかったんでしょうか。

小菅:ここを膨らませてくれ、とか、わかりやすくしてくれとかはありましたが、ボツというボツはないですね。制作にあたり先生は、まずプロットを組み、次いで脚本をつくるんですが、脚本時点で疑問点などをしっかりクリアにされてから、次のステップであるネームに進むんです。なのでネームの段階では脚本からさらにパワーアップして、より完成度の高いものになっています。作家としては本当に、すべてにおいて能力の高いかただと感じますね。

――『帝一の國』という作品の制作において、先生が1番こだわられたことはなんでしたか?

小菅:もちろん、キャラクター、ストーリー、すべて大事にされていて、それぞれへのこだわりも物凄いですが…。『帝一の國』は、古屋兎丸の考える“友情・努力・勝利”の物語であり、古屋兎丸が思う「ジャンプ漫画」であることは違いないです。ただ、少年漫画ということを考えると、その性質的には本来ならば大鷹弾が主人公に据えられるじゃないですか。けれども兎丸先生の作品としては、小ずるくて人間らしい、ちょっと“やなやつ”な帝一が主人公になる。それが何より、先生のこだわりかもしれないですね。

――光属性の弾ではなく、人間的な闇も併せ持った帝一が「古屋兎丸作品」においては主人公なんですね。

小菅:先生が描きたいのは、人間のそういう部分なのかなと。…いつだか先生に、「普通だったら“大鷹弾を主人公にしてくれ”って言われるだろうけど、小菅さんは言わないでくれたからよかった」と言われました。僕は面白ければいいと思ったし、兎丸先生が描くから面白くなるだろうと思ってOKしたんですよね。「嫌なやつでずるがしこい」、そんな男が主人公…面白いじゃないですか、そんなの!(笑)新人作家だったらOKしていなかったかもしれませんが、兎丸先生ですから、不安はまったくありませんでした。

――マンガ家・古屋兎丸先生と、担当編集・小菅さん。二人は熱い“絆”で結ばれているんですねえ…

帝一の國
帝一の國
帝一の國

――キュン!

小菅:今何か言いました?

――いえ!! お話聞かせていただき、ありがとうございました!

小菅:映画もよろしくお願いしますね~!

 

男同士の熱い絆、そして熱い闘いを描いた珠玉の物語『帝一の國』。作品の向こう側にあったのもまた、ひとつの熱い絆。その熱を、映画館で、コミックスで、ぜひ体感してみてくださいね!

どんな物語かもっと知りたい人は、ここで読めちゃうぞー!
ちなみに! 2週間毎日2話ずつということはぜんぶで28話…つまり7巻くらいまでだから…原作全14巻の約半分!? あと映画の公開日には古屋先生の描き下ろしメッセージイラストを配信だって!! いいのかな!? 大盤振る舞いだね!? ありがとう!! ありがとうジャンプ+!!)

映画_帝一の國

……『帝一の國』に登場する少年たちは、熱く、逞しく、けれどもそれぞれに弱さも併せ持っています。本記事で紹介してきた他作品の登場人物においてもそうですが、古屋兎丸の描く物語では、決して弱者は蔑ろにはされません。誰しもが強くある必要はないし、そもそも弱さのない人はいないし、弱さが必ずしも欠点ではないと、古屋兎丸のやさしさが読者をやわらかく抱いてくれるのです。どんな個性も魅力的に描きだすその手が、次にどんな個性の物語を見せてくれるのか…楽しみで、待ちきれません!

原作と映画で高まったこの思いは、4/25に発売されたばかりの『帝一の國』LINEスタンプ(LINEスタンプショップにて240円もしくは100LINEコインで購入可能)を所構わず押しまくることでおさめることにします!

帝一の國_スタンプ
帝一の國_スタンプ

…たぶん一番使ってしまうのは、毘沙門天さまの「喝!!」。

(文章:シンクスタッフ・かわうそ)

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