2017年5月13日(土)11時00分

祝・実写ドラマ化!黒木華・森山未來らが演じる『みをつくし料理帖』作品世界に迫る!原作者・高田郁先生スペシャルインタビュー&コミックス版作者・岡田理知先生からのお祝いコメントも!

本日5/13(土)よる6時5分から始まる、NHK土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』! 原作は、大坂から焼けだされ、料理の腕だけをよすがに江戸へ渡った女性料理人・澪(みお)の物語を描く、高田郁先生の時代小説。(※高田郁先生の「高」ははしごだかが正式表記です。)
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そんな『みをつくし料理帖』…実は集英社クリエイティブ「月刊officeYOU」で、2009年から岡田理知先生作画によってマンガ化されていたのをご存知でしょうか?

八朔(はっさく)の雪 みをつくし料理帖 1

享和二年。大坂・淀川の大洪水で両親を失い、天涯孤独の身になった少女・澪―。上方と江戸の味の違いに戸惑いながらも、料理人として一歩一歩成長してゆく。話題の時代小説「みをつくし料理帖」シリーズ第一作を完全マンガ化!! 巻末には原作者・高田 郁氏による書き下ろし特別エッセイを収録。
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心と体にあたたかく、そして“美味しい”人情時代劇。コミックス版でもそのぬくもりを大切に、魅力あふれるにぎやかなキャラクターが息を吹き込まれました。そんな名作が時を経て、いま再び映像で見られる…あの名シーン、この名シーンがどう映し出されるのか楽しみでなりません!

八朔(はっさく)の雪 みをつくし料理帖
↑お世話になっているお店を繁盛させるため、試行錯誤を重ねて看板メニューを考えだす澪。
八朔(はっさく)の雪 みをつくし料理帖
↑父母と生き別れた幼き日、縁のあった料理屋で奉公することを決意してから、澪には料理の道だけがあった…!

さらにさらに、ご存知でしょうか! そもそも高田先生はかつて「川富士立夏」というペンネームでマンガ原作者として作品を手掛けていらしたほど「YOU」編集部&「officeYOU」編集部とご縁が深いかたなのです。「マンガ原作者」と「原作小説家」…2つの立場で同じ編集部とお仕事をするという、珍しい経験をされていた高田先生に、シンク編集部が突撃インタビューを敢行。『みをつくし料理帖』制作の裏話を伺ってまいりました!
また本記事のしめくくりには、コミックス版を描かれた岡田理知先生からもお祝いのコメントを寄せていただきました! 最後までじっくりご覧ください。

時代小説家・高田郁先生に聞く! 『みをつくし料理帖』制作裏話

――高田先生、ではさっそくお話を伺わせてください!

この度はご縁を賜り、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

――先生は、もともとは「マンガ原作者」から「小説家」となられ、再びその小説がマンガ化されるという珍しい経験をされていると思いますが…物語を描くうえで、違いはあるのでしょうか?

マンガ原作も小説も、取材して物語を組み上げる、という意味ではそれほど違いがあるようには思いません。ただ、マンガ原作では原作者の書いた原稿を読むのは、編集者と作画を担当するマンガ家さんだけで、読者のかたの目に触れることはありません。小説の場合は、まさに私の書いたものをストレートに読者のかたにお読み頂く、というのが大きな違いです。マンガ原作では、マンガ家さんのお力をお借りしなければ、作品として誰かに届けることはできないのです。
作画の作業では、マンガ家さんに多大なご苦労をおかけしますが、自分の投げた球がよりすごいものになって打ち返ってくるのを目の当たりにするのは、大変な喜びです。たとえば、原作者は原稿に「桜の樹が1本、立っている」と1行書くだけですが、作画をするマンガ家さんは作品の意図を汲んだ上で、どんな枝ぶりの、どんな種類の、どんな桜が、どんな風に立っているのか、それを絵にするのです。これってすごいことですよ。それを考える度に、これまで組んでくださったマンガ家さんに対して、感謝の気持ちで一杯になります。
マンガ原作にはマンガ原作の、小説には小説の、それぞれの醍醐味があります。マンガ原作者として過ごした歳月は、小説を書くことを生業とするようになった今も、私にとって、何ものにもかえがたい大きな財産です。

「みをつくし料理帖 4 花散らしの雨」より。
↑『みをつくし料理帖 4 花散らしの雨』より。春のうららかな江戸の風景。ちなみに集英社も、集英社クリエイティブも、この「元飯田町・俎橋」の近く。

――先生は、マンガ原作でも時代小説でも、常に「市井の人」が主役の物語を描き続けているように思いますが、何か理由があるのでしょうか?

自分では「市井の大人に向けた物語」にこだわっている意識はないのです。ただ、何の素養もないままに原作者となった当初、「マンガ家さんがひとりで完成させられる物語の世界に、あえて原作をつける理由は何か」を深く考え、2つの道があるなあ、と思い至ったのです。ひとつは「マンガ家さんさえ思いつかないストーリーを考える」という道。もうひとつは「マンガ家さんひとりでは難しいこと、つまり徹底した取材を基にしたストーリーを組み上げる」という道。前者の道を選べる才能がないことは自覚していましたから、後者の道を、ただひたすら歩いてきたという感じでしょうか。それがつまるところ、市井の大人に向けた物語と重なっていたのかな、と思います。小説を書くようになった時も、歴史上に名を残した人物にはさほど心をひかれなかったのは、そうした積み重ねと、そしてやはり、山本周五郎さんの影響が大きいです。『なんの花か薫る』等の周五郎作品をお読み頂けたら、「ああ、なるほど」と思って頂けるのでは、と。

――岡田理知先生の描くコミックス版『みをつくし料理帖』の世界をはじめてご覧になった時の感想をお聞かせください。

澪の眉の下がりっぷりに、思わず「みごとな下がり眉!」と。本当に愛らしい娘に描いて頂けて嬉しかったなあ。種市、ご寮さん、小松原さまに源斉先生、又次、おりょうに伊佐三に太一等々。いずれもキャラクターが生きていて、「さすが岡田先生」と思いました。今回、「花散らしの雨」も新たに読めるようにして頂けたので、とてもありがたいです。美緒も、可愛らしくてキレイで、素敵ですよね。
それと、澪の時代を描くのに、岡田先生がたくさんの資料にあたって丁寧に描いてくださっているのも、大事な見どころのひとつだと思っています。床几やちろり、鰹節を削る様子も、とても正確で、岡田先生の苦労のあとがしのばれます。

澪の「下がり眉」
↑澪の「下がり眉」。小松原さまでなくとも、からかいたくなる愛らしさ。
左下に描かれた、酒をあたためる容器が「ちろり」。
↑左下に描かれた、酒をあたためる容器が「ちろり」。
さりげなく描かれる調理シーン、その作法ひとつひとつが、綿密な下調べによるもの
↑さりげなく描かれる調理シーン、その作法ひとつひとつが、綿密な下調べによるもの。

――『みをつくし料理帖/八朔の雪』では、第1話で出汁がらの鰹節から「つるやだけの売りになる肴」を自分の手で作りあげようとします。さまざまな料理がある中で「この料理」を選んだきっかけをおしえてください。

第1話の鰹田麩は、物を捨てない、という江戸時代の考えがもとになっています。また、私ごとですが、うちでは母が出汁を引くのに毎回、ビックリするほど大量の鰹節を使うので、「あの出汁がらを利用できれば」と思ったもので。その後の料理については、旬を大事にして、当時、確かに作ることが出来ただろう、と思われるものを試行錯誤して選んでいます。料理は全部で250ほど試作していますから、作中に出さなかったものも実はとても多いのです。

――250種類! それは美味しそうな現場ですね…。澪のように先生ご自身も関西のご出身ですが、原作中でもあるような「上方と江戸の違い」を実感されたことはありますか?

今でこそ、どこにいても同じような品が手に入りますが、昭和50年代、進学のために兵庫県から上京した時、それはもう驚くばかりでした。まず食パンが薄い! 関西は5枚切りか6枚切り、でも関東は8枚切りが主流だったので、その薄さにビックリ。ネギは白い(関西は青ネギ)、蒲鉾は蒸し蒲鉾(関西は焼き蒲鉾)、中濃ソースって何?(関西には当時存在せず) 何故、年末に蛸?(関西では蛸は夏)等々、日々、スーパーの棚の前で驚いてばかりいました。食文化の違いや、その奥深さがずっと記憶に刻まれて、のちに「みをつくし料理帖」へとつながっていきます。
それに、今と違って江戸時代は、水質もきっと関東と関西では相当違っていただろう、と考えられます。日本料理ほど水を使う料理はほかになく、だからこそ、水が違えば料理も違ってくるのだろうなあ、と思っています。水の硬度によって、引きやすい出汁も異なりますから。

――西と東は、出汁が本当に違いますよね。ちなみに大阪(上方)と東京(江戸)それぞれで先生が「これは…しみじみおいしいなぁ」と思うものがあったら教えてください。

関西と関東、それぞれに美味しいものがたくさんあります。江戸時代にタイムスリップしたなら、そうですねぇ、江戸では深川牡蠣の殻焼き、大坂では牡蠣の土手鍋が食べたいなあ。あと、江戸のコハダの握り寿司、大坂の熱々の蒸し寿司も好きだなあ。ああ、お腹が空いてきた(笑)。

江戸流の牡蠣の食べ方はやはり殻焼き。
↑江戸流の牡蠣の食べ方はやはり殻焼き。澪が食べる様子も含めておいしそう…。

――最後に…今回、ドラマに合わせてデジタルコミックスのキャンペーンも行われます。「はじめまして」の読者の方にむけて、一言メッセージをいただけますでしょうか。

このページをご覧の皆様、初めまして、作家の高田 郁です。NHKの土曜時代ドラマ「みをつくし料理帖」で作品を知ってくださったかたも多いかも知れません。この物語は、デジタル版でもコミック化されています。岡田理知先生の描かれる、愛らしい下がり眉の澪のことも、ご覧頂けたら嬉しいです。
デジタルにはデジタルならではの味わいが、そして、紙の媒体には紙ならではの魅力があります。紙の肌触りを味わいつつ、ページをめくる喜びもお届け出来たらなあ。そして、紙の本に出会うために街の本屋さんに出かけて頂けたら、こんなに嬉しいことはないです。デジタル版も紙版も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

――ありがとうございました!

コミックス版『みをつくし料理帖』作者・岡田理知先生スペシャルコメント!

なんと! 実写ドラマ化のお祝いに寄せて、コミックス版を描かれた岡田理知先生からも、制作時の思い出を振り返ってコメントをいただきました!


『みをつくし料理帖』のマンガ化のお話をいただいた時は戸惑いました。時代劇には全く疎かったからです。ちょんまげ?日本髪?描けるのか? でもとにかくチャレンジと、江戸時代の資料を集め、担当氏に小説に登場する場所に取材に連れて行っていただいてイメージを固めていきました。原作の高田先生にも資料をお借りしたり、なんとお父様のお位牌の写真を送っていただいたりもしてしまいました(嘉兵衛の位牌になっています。今考えると大汗!)。料理も絵にするのがなかなか大変で、江戸料理や懐石料理の資料をあたったり、「こぼれ梅」などは担当氏に関西から取り寄せていただいたりしました。また、アシスタントさんたちも江戸の風景を再現しようと頑張ってくれました。この様にたくさんの方々の力と「みをつくし料理帖」への愛で、コミックス版を描くことができました。感謝感謝です。
下がり眉の澪の奮闘をご覧いただけたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。


◆コミックス版『みをつくし料理帖』ご購入の際は、
最寄りの書店にてご注文いただくか、電子書籍にてお買い求めください。

コミックス版『みをつくし料理帖』ご購入

『みをつくし料理帖』は、剣でもなく、侍でもなく、包丁によって磨かれた料理が主役の時代劇。そのなかで“江戸だからこそ”いっそう深く交わされる人情、いっそう真摯な人々の想いが胸に迫ります。現代とは一味違う温もりを、マンガで、ドラマで、もちろん小説で…心ゆくまで味わってください。しっとりと美味しい物語が、私たちが明日に進む元気を分けてくれますよ。

文章/かわうそ

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