2017年5月19日(金)12時00分

中村明日美子が描く新連載『王国物語』は、ファンタジー大河ロマン!?ウルトラジャンプ編集部で担当編集に聞く、連載ウラ話を大公開!

2016年に代表作『同級生』が劇場版アニメ化を果たした希代のマンガ家・中村明日美子先生。そのマンガ新連載が、ウルトラジャンプ2017年5月号から開始された。その名も、『王国物語』。

王国物語
(C)中村明日美子/集英社

↓睦まじく暮らす麗しきふたりの青年、アーダルテとアードルテ。

王国物語_アーダルテとアードルテ

↓かたや紫、かたや青に美しくゆらめく瞳を持つふたりだったが、ある日かたわれのアーダルテが、ひとりの乙女を見染めて…?

ある日かたわれのアーダルテが、ひとりの乙女を見染めて…?

…ボーイズラブや少女向けなど、官能的なものからライトな読み口のものまで作風は幅広く、今や男女問わずメジャー的な認知と支持を得ている中村先生。…とはいえ、あの「中村明日美子」が「ジャンプ」を冠する雑誌に…!? その経緯を探るべく、早速ウルトラジャンプ編集部に直撃! 連載に至る流れや物語の行く先、そして先生のお人柄に迫るべく、担当編集・上村さんにお話を伺ってまいりました!

担当編集に聞く! 作家『中村明日美子』のすがた

――たのもー! たのもー!

担当編集・上村さん(以下「上村」):あら、取材のかたですか? こんにちは~。(ホワホワ)

――(ウッ! なんだこの異常なまでの癒しオーラは)なっ、中村明日美子先生の新連載についてお伺いさせていただきたく…!

上村:担当は私ですが、私で大丈夫かしら…。よろしくお願いしますね。(キラキラ)

──(ウッ! なんだこの浄化されそうなキラメキは)ま…まずは、中村先生との出会いからお話しいただけますか。

上村:デビュー前の明日美子さんが、太田出版の季刊誌「マンガ・エロティクス」の新人賞に応募してくだった作品を拝読したのが最初の出会いでした。(注・この頃、上村さんは太田出版の編集者)選考会の満場一致で「(賞は)この人しかいない」となったのを覚えています。その時は私自身、まだ編集として新人の頃でしたので、「審査会ってこんな才能が毎回ボンボンくるんだ」と思ってしまったものです(笑)。実際は、稀に見る素晴らしい才能で、私も明日美子さんの作品にばっちり一目ぼれしました。最初は別の者がずっと担当していたんですが、『Jの総て』という作品が終わる頃に担当を引き継ぎまして、一緒に立ち上げた最初の作品は『ばら色の頬のころ』。それ以降は、途中で後輩に引き継いだ時期もありますが、継続的に担当編集としてお付き合いさせていただいてます。

──「中村明日美子先生」って、実際はどんなかたなんですか?

上村:とってもチャーミングなんですけど…ちょっとドSなところもありますね(笑)。なんかすごくツッコまれるんですよ…私にだけじゃないと思うんですけど……。頭の回転がすごく速くて、とても可愛らしいのに、ツッコミは芸人さん並み。「そんなに笑いを取らなくて良いんですよ」って言いたくなるくらい(笑)、いつも面白いかたです。

──繊細な作品群からは、すこし意外にも思える一面ですね。

上村:もちろん作品にも表れているように、観察眼と想像力も優れていらっしゃいます。何でも見透かしてしまうようなところがあって、私自身のことなんかもしばしばズバっと言い当てられています。世の中の出来事についてお話していても、明日美子さんはすぐ話の核に辿り着いているようで、それもまた鋭い観察眼と深い想像力によるものなのかなと思っています。

──その観察眼が作品にも生かされていくんですね。先生の作品についてはどう思われますか?

上村:キャラとお話と絵が三位一体となって良いのですけど、なかでも絵の魅力は語りつくせないですね。フォトジェニックと言いますか…マンガにフォトジェニックなんて言葉は間違っているかもしれませんが、それでも明日美子さんのマンガは、被写体もいいし、どのアングルも美しくて、撮ってるカメラマンの腕が良いんだなという感じです。イコール明日美子さんなのですが(笑)。私は勝手に読み手として「どこから見てもいいネ!」、「きみ可愛いネ~!」なんて言いながら撮り続けるカメラマンの気持ちにさせてもらっています(笑)。だって、瞳が見えてもかっこいいし、隠れててもかっこいいし、指先だけ描いてもかっこいい。どこから見ても素敵なんですもん…全コマかっこよくないですか!?(笑)

──上村さんは、担当編集であり、先生のとびきりのファンでもいらっしゃるんですね…!(笑)たしかに、先生のマンガの画面は絶妙ですよね。

上村:単純に描き込みが多いなどではなく、マンガ的な白黒のバランスに優れていますよね。描線の美しさと色気が際立っていると思います。優れたカメラマンが撮ったものをなめらかな描線で描き映す…やはり、観察眼が良いんですね。

──制作にあたって、打ち合わせはいつもどんなふうにされているんですか?

上村:打ち合わせは、ほぼ雑談です(笑)。明日美子さんがいつも仰るのが「担当編集にもネームで驚いて欲しい」ということ。先にすべてを打ち合わせしてしまうとそれが出来ないので、事前にあまり細かな打ち合わせをするのは避けたいというタイプのかたなんです。…手の内を晒したくないということですね(笑)。なので、打ち合わせではざっくりと方向性だけ決めて、ネームを受けてから細かなところのお話をします。

──上がってくるネームについては、どのようなところをチェックされているんですか?

上村:最近はリテイクするところも、もう滅多にないんです。完成度がすごすぎて…! 最初の頃は「ここをもうすこし分かりやすく」などもありましたが、近ごろ申し上げるのは本当にちょっとしたことだけです。勘がものすごく良いかたなので、こっちが気づかないところも直してきてくださったり。もう、私は何もしてないです(笑)。

大河ファンタジー『王国物語』誕生の秘密

──…そうして長くご担当をされてきて今回、ウルトラジャンプさんで新連載『王国物語』を開始されたわけですが…。今作は、そもそもどういったきっかけから生まれたのでしょうか。

上村:着想のきっかけはもともと、いまpixivさんや「となりのヤングジャンプ」で公開している『アードルテとアーダルテ』の方ですね。あれが『王国物語』の第1作目になるのですが、作品は最初、2011年に太田出版で立ち上げた「ぽこぽこ」というウェブコミックサイトに、オープニングの華として描いていただいたものなんです。当時、お忙しい明日美子さんに「読切でもいいから描いて欲しいんです」とご相談をしたら、「WEBだからカラーマンガでも良いですよね?」とあちらから仰ってくださって!「え、もちろん良いけど…良いんですか!?」と(笑)。そんな労力をかけてくださるのかと。「カラーで描けるなら、カラーだからこそやれることをやりたい」と明日美子さんが考えて…そこからまず、“双子だけれども、瞳の色が違う”という設定が生まれたのだと思います。それが、今まであまり描いてこられなかった「ファンタジー」への挑戦に繋がりました。

──「ファンタジー」というジャンルには、もともと先生は興味を持っていらしたのでしょうか?

上村:「いつかやるだろう」と思っていたみたいです。明日美子さんは、子どもの頃からRPGファンタジーやその世界観はずっとお好きでいらしたそうなんですが、マンガとしてはこれまでちゃんとトライしたことはなくて。「いつかはやるだろう」から「いよいよやります」というのが、今回の作品なのかなと。

中村明日美子

上村:こうした“大河ロマン”的なものは、連載ではほぼ初めてになるのですが、明日美子さんはすごく楽しんで描いていらっしゃるようです。

──舞台設定や王国の町並みなども、ファンタジーだと独特なものになってきますよね。

上村:連載が始まるときに、いろいろ資料を集めてらっしゃいました。「モロッコの砂漠の資料買いました」って(笑)。コスチュームなどについても、こういったもののデザインは明日美子さんの得意分野でもありますので、我流も混ぜつつ楽しみながら考えてらっしゃるかと思います。

──WEBサイトにて、最初の読切作品を発表された時の反響はいかがでしたか?

上村:すごい反響でした。それもあって、シリーズ化したいというのはずっと考えていました。「毎月連載は無理でも、1年に2~3回…」なんて言ってたんですけど、やはりフルカラーマンガを描くのは他作品との時間的兼ね合いも考えるとすごく大変で。つくづく、最初によくやってくださったなと思うくらい(笑)。その後は、同じく太田出版のマンガ雑誌「エフ」にて明日美子さん特集をさせていただいた時に、巻頭カラーで『王と側近』という話を描いていただいたきりになってしまい…。そうこうしてるうちに、2016年に「ぽこぽこ」が休止いたしまして。

――そうなってしまうと、そのまま立ち消えてしまうことも可能性としてはあったわけですよね。

上村:けれど、続きを描きたいという気持ちは明日美子さんご自身も持ってくださっていて。キャラが明日美子さんの中で動き出していたんですね。実は2話分のネームもあったので、「もうこれは絶対世に出そう!」ということで、掲載していただける雑誌はどこだろう、という話になりました。「締切の決まっている紙の雑誌ならお尻も叩いてもらえるな」と思いつつ…また数年経ってしまったらマズイので!(笑)

──そして、「ウルトラジャンプ」との出会いに繋がるんですね。

上村:ちょうど、私は「ウルトラジャンプ」でオノ・ナツメさんの連載も担当させていただいていまして。ファンタジーという題材も含めて、『王国物語』や明日美子さんは雑誌のカラーに合うんじゃないかなぁと考えていたんです。「ウルトラジャンプ」は絵に個性があってビジュアルが強い作家さんが多いですが、明日美子さんも絵力があるので、ぴったりなんじゃないかなと。なので、明日美子さんと打ち合わせで「どこで連載するか」をご相談する時、「私の第一候補は“ウルジャン”です」とお伝えしたところ、明日美子さんも「是非」…ということで、意思はスムーズに固まりました。

──「ウルトラジャンプ」は、今まで中村明日美子先生が活動していらっしゃったところとは別のフィールドだと思うんですが、それについてはプレッシャーなどはなかったのでしょうか?

上村:私も、明日美子さんに「どうでした?」ってちょっと聞いてみたんです。普段は新しい出版社さんや雑誌でやる時はすごく緊張されるようなんですが、今回はすでにあった物語を引き受けてもらうという流れで、やりたいことをやらせてもらっている形なので、「リラックスして始められた」と仰っていました。

『王国物語』×ウルトラジャンプの化学反応

――なるほど…。あっ、ウルトラジャンプ副編集長の西村さん、ちょうどいいところに! ちょっと来てください! 暇じゃなくても来てください!!

西村:エッ。怖い。なんですか。

――中村明日美子先生新連載『王国物語』について、編集部さんサイドからのお話も聞かせてくださいっ! ウルトラジャンプ編集部さんとしましては、中村明日美子先生の連載を開始されることについてはどんな意図、ご期待のもとだったのでしょうか。

西村:そうですね…僕自身、もともと一読者として中村先生の作品を楽しませていただいていたのですが、まさか「ウルトラジャンプ」で連載していただく日が来るとは想像していませんでした。「王国物語」は題材がファンタジーであること、その壮大さ、また先生がこれまでに男性向けの雑誌であまり執筆されていないこと…どの意味をとっても面白くなるだろうと思い、ぜひ!と。そもそも「ウルトラジャンプ」は集英社の中でも、フリーの編集者に多くご活躍いただいて、ちょっと変わった位置づけにある雑誌なんです。雑誌のカラーは都度作品によって変わっていくものと考えているので、いろんな作品がぶつかりあうことで誌面が活性化していくのはすごく嬉しいことです。作品を拝見して編集長ともども抱いた“この先を読みたい“というシンプルな願望にくわえて、先生に「ウルトラジャンプ」で連載していただくことで、また1つ新しい風が吹くことを期待しました。

──編集部から、作品の内容に関してのリクエストはありましたか?

西村:上村さんと先生に基本的にはお任せする形です。まだ1話が掲載されたばかりですが、雑誌の中で見ると、新鮮さと同時に思いのほか馴染んでいて、「ウルトラジャンプ」の誌面的にも「アリ」だなと改めて実感しました。「となりのヤングジャンプ」で公開中の第1話の前日譚と併せて読むとより楽しんでいただけると思います!

──そうして満を持して「ウルトラジャンプ」で連載が始まった『王国物語』ですが…読者が注目すべきポイントを、あらためて教えてください!

上村:『王国物語』というひとつの舞台のうえに、色々な物語があるのが今回の作品になっています。双子の「アーダルテとアードルテ」の物語がひとつ、5/19(金)発売の「ウルトラジャンプ」6月特大号に載る、「王と側近」の物語がひとつ。そこで描かれるキャラクター達の関係性がどう変容していくのか…というのが見どころになってくるのではないでしょうか。もともと人と人の関係性は、必ずしもずっと均衡ではないですよね。精神的なパワーバランスなり愛情のパワーバランスなり、何かが揺らいでいく。それがロマンチックでドラマチックだと思うのですが、そういうちょっとした「関係性の変容」を描きとることが、明日美子さんはお得意だし、読む人の心を揺り動かすところだと思います。今回は読切形式のシリーズ物のため、前後で時を飛ばすことがありますが、連続じゃないからこそ、変容の様子が一層くっきりと見えてくるかもしれません。…というのも、明日美子さんとそこまで話したわけではないんですけど(笑)、きっとそうなってくるシリーズなのかな…と。

――確かに、『王国物語』というタイトル、「ファンタジー」というジャンルからしても、読者はドラマチックで壮大な物語を想像していると思います。

上村:明日美子さんの作品は、その耽美的な絵柄から抽象的な話かと思われているかたもいるかもしれませんが、むしろいつも物語は骨太なんですよね。

西村:『王国物語』も1話目からドラマチックでグっときました。

上村:日常ものや学園ものからサスペンスまで、題材を選ばずになんでも描けるかたですが、何がテーマになっていても、感情がとにかくドラマチックなんです。この作品は大河ロマン的な一面もありますから、よりそれが深く描かれていくかと思います。

――「双子」と「王と側近」以外のお話も出てくるんでしょうか?

上村:いずれ出てくると思います。でも今は、明日美子さんの中では、「王と側近」の二人がすごく動いているみたいですね。年内はその二人の話になる可能性が高いです…!

西村:「ウルトラジャンプ」への掲載は、次作が6月特大号に載った後、夏に1本、秋に1本…ぐらいのペースで、シリーズ連載していく予定です。6月特大号掲載の「王と側近」は以前太田出版さんの「エフ」に掲載されたものの前日譚という位置づけになりますが、連続しているというよりは、一つ一つを毎回読んでも何か感じる物がある作りになっていると思いますね。ここでも先生の短編の巧さが際立っているかと思います。

上村:途中からでも入れると思いますので、どこからでも読んでください!

重厚な物語のゆく先は…いろんな種類の“いい男”天国!?

──そんな『王国物語』が、これからどうなるのか…。言える範囲で教えてください!

上村:それが、私もわからないんです…!(笑) ですがとにかく、双子の「アーダルテとアードルテ」や、「王と側近」シリーズの続きを始め、きっと王国にまつわるいろんな人々の関係性を描いていくのだと思います。いくつかの物語を、どういう順番でみせていくかは明日美子さんの手のひらのうえなんですが、いずれも物語が展開していった末に、最後に揃ったパズルのピースが、タペストリー的に編まれる……といいな! ということで、私は未来にボールを渡します(笑)。でも本当に言ってるんですよ、明日美子さんに「そうなるといいですよね!」って!(笑)…きっと明日美子さんは、やってくれると思います。

──未来は先生のみぞ知る!(笑)

上村:オムニバスで読んできたものが一緒になっていくという、最後の楽しみを期待して、それまでは、ひとりひとりのキャラクターのそれぞれの物語を楽しんでいただければと。

――それでは、最後になりますが…上村さんは『王国物語』では誰推しですか?

上村:え! どうしよう~!(笑)すっごい迷うんですけど………紫の瞳のアーダルテかなぁ~~!

上村さん推しの元王子・アーダルテ。
「となりのヤングジャンプ」にて前日譚を特別公開中!

↑右側が、上村さん推しの元王子・アーダルテ。

上村:なんていうか、ものすごいいい男なんですよ。読んでいただければ分かるんですけどっ!

西村:かっこいいですよね。懐が広くて…

上村:そうなんです、懐、ちょっと広すぎますよね!? みんな好きになっちゃいますよね!? 美少年だったアーダルテが、作中で美青年になっていますが、きっと歳をとってこのあと美中年になっちゃいますよね!? …わかりませんけど!!(笑)

西村:あ、先生が描く女性キャラクターも魅力的なので、「ウルジャン」的には女子キャラも期待しております!

上村:そうですね。素敵な女子キャラも、かっこいい男子キャラも、いっぱい登場するのではないかと(笑)。

西村:そ、そんなにたくさんイケメンばっかり増えても…イケメン以外も居るでしょうよ、王国には…。

上村:そうですけど…でもだって、見たーい! いろんな種類のいい男が見たーい!(笑)

──(素直なお姉さんだ!!(笑))ど、読者もきっと「見たーい」はずです!(笑)楽しみにしておりますっ! ありがとうございました~!!

…中村明日美子作品を愛し、作品の男前達を愛する担当編集・上村さんに見守られ、封切られた『王国物語』。始まったばかりの作品が、これからどんなドラマを描いていってくれるのか…。明日美子先生ファンのみならず…皆さん! 翻弄される心の準備を、バッチリ整えておいてくださいね。

ちなみに、本日5月19日(金)から、「となりのヤングジャンプ」で「王と側近 episode1」も掲載されています。こちらも必見ですよ〜!!

ウルトラジャンプ

また、「ウルトラジャンプ」6月特大号も本日から発売です!
連載作品の試し読みができる「ウルトラジャンプフリー!!」もありますので、こちらも併せて読んでみてください!

インタビュー内で上村さんが仰ったように、ウルトラジャンプでは個性的な作家さんがたくさんいらっしゃいます! コミックシンクでは、今後もウルトラジャンプをプッシュした特集記事を掲載していきますので、読者の皆さんはぜひチェックしてくださいね。

文章/かわうそ

関連情報/外部リンクはこちら

(C)中村明日美子/集英社