2017年6月20日(火)20時30分

【2017年新連載レビュー】大切な人のためにあなたは何ができるのか――SF黙示録『ふたりぼっち戦争』を紹介!【ジャンプSQ.】

2017年6月発売の「ジャンプSQ.7月号」より連載を開始したSF黙示録『ふたりぼっち戦争』。作者の肘原えるぼ先生は、本作が初の連載作品! 究極の父子愛を描くパニックヒューマンドラマ、読切『36.5℃の掌』で圧倒的反響を得た期待の新星が満を持して登場!!

ふたりぼっち戦争

・肘原えるぼ先生ってどんな漫画家?
肘原えるぼ先生は、『貧乏神が!』『双星の陰陽師』の助野嘉昭先生、『日々ロック』の榎屋克優先生を輩出した京都精華大学マンガ学部出身。2014年、ジャンプSQ.の月例新人漫画賞「第12回クラウン新人漫画賞」にて、『運命の神様』で準入選を獲得。その後、『ヴァニタスパレット』、『絶望のトリガー』、『36.5℃の掌』といった3本の読切がジャンプSQ.に掲載されていた。

肘原えるぼ先生は、なんといっても圧倒的な画力が特徴。なかでも柔らかな描線で描かれる少年の絵は特筆もの。淡い色調の、センスあふれるカラーページにも目が奪われるはず。クラウン新人漫画賞準入選受賞時の、編集部のコメントを振り返ってみると…

「キャラクターの表情だけで漫画になってしまう、ずば抜けた才能。対象者への感情移入の導線やデザインセンスなど、突っ込みどころは多いが…とにかく次回作が楽しみ。」

…と評されており、当時から期待されていたことが伺える。様々な経験を積み、初連載を勝ち取った『ふたりぼっち戦争』。どんな作品なのか、早速見ていこう!

圧倒的な筆致による世界観やキャラクター表現に心奪われる!

本作は人類を滅ぼそうと地球に宣戦布告してきた侵略者・イドラが出現した、ニューヨーク・マンハッタンを舞台とするSF作品。主人公の少年・イリヤは、幼いころに交通事故に巻き込まれて足を悪くし、車椅子での生活を余儀なくされていた。人類がイドラに対抗すべく開発した遠隔操作で動かす生体兵器「アルカナ」により、イドラの急襲から救われたイリヤ。アルカナを操縦する「アルカナプレイヤー」となり、誰かを救うことを夢見るようになる。

ふたりぼっち戦争_アルカナプレイヤー

先の場面もそうだが、絵としての情報量が多いなかでも、誰が何をしているかがはっきりとしているのがすばらしい。背景にも手抜かりがなく、時間をかけ、世界観を丁寧に描いている。

ふたりぼっち戦争_背景にも手抜かりがなく、時間をかけ、世界観を丁寧に描いている
ふたりぼっち戦争_背景にも手抜かりがなく、時間をかけ、世界観を丁寧に描いている

周りの揶揄する声にもめげず、何回試験に落とされても、アルカナプレイヤーを目指してイリヤは努力する。「今度は僕が助ける側になるんだ」と、確固たる意志をもって奮闘する彼の姿は感動的だ。

ふたりぼっち戦争_アルカナプレイヤーを目指してイリヤは努力
ふたりぼっち戦争_アルカナプレイヤーを目指してイリヤは努力

イリヤをやさしく見守るアンナにグッとくる!

時に身体を壊すほどのハードな練習を課すイリヤをやさしく見守っているのが、姉のアンナだ。身体のことを案じて、はじめは「アルカナプレイヤー」を目指すイリヤに反対していたアンナだが、固い決意を見て、イリヤを応援するようになる。

ふたりぼっち戦争_姉のアンナ
ふたりぼっち戦争_姉のアンナ

アンナ自身は男性に引けを取らない活躍を見せる防衛軍所属の軍曹。才色兼備で周囲からの信頼も厚い。こんな姉が欲しかった…。

ふたりぼっち戦争_姉のアンナ

おねショタならずとも「ちょっとそこ代わって!」と言いたくなる一幕をいくつか紹介。なお、おねショタについて知らない人は自己責任で調べよう(なおその筋に目覚めても責任はもてないぞ!)。

ふたりぼっち戦争_姉のアンナ
ふたりぼっち戦争_姉のアンナ

とっても仲のいい姉弟であるアンナとイリヤ。どういう人物なのかや、心象の移り変わりがしっかりと描かれているので、彼らの考えに共感できることだろう。

単なる英雄譚では終わらない!?
引きのあるラストシーンに驚嘆!

本作の連載開始前、『ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」』で、星野桂先生に突撃インタビューしていた肘原えるぼ先生。「キャラクターが動いてストーリーが作られる」「ファンタジーだからこそ人物以外の背景が大事」「月刊連載は“ラストの引き方”が重要」など、星野桂先生から様々なアドバイスを受けていた。

星野桂先生に突撃インタビューしていた肘原えるぼ先生

第1話にはこうしたアドバイスが存分に反映されており、特にラストは衝撃的なものになっているぞ! 読んだアンナが表情を曇らせた、アルカナの契約書に書かれていたこととは? 無事、最終適性試験に合格したイリヤを待ち受ける運命とは? ぜひ自分の目で確かめてみよう!

最終適性試験に合格したイリヤを待ち受ける運命

コミックシンク編集部が“勝手に”つける!?
『ふたりぼっち戦争』おすすめ度数チェック!!

  • ●SF度     ★★★★★
  • ●救世主度    ★★★★
  • ●おねショタ度  ★★★
  • ●美麗イラスト度 ★★★★★
  • ●期待の新人!度 ★★★★★★★

王道のSF作品であるだけに、SF度はもちろんマックスの★5! 第1話時点ではアルカナプレイヤーに合格したところまでなので、救世主度はやや評価を抑えめとした。
ほんわかするイリヤとアンナのやり取りはあるものの、あくまで幕間の一場面のため、おねショタ度は低めに。
美麗イラスト度、期待の新人!度はラストまで読んでみれば、高評価になることはわかってもらえるはず! 今後の期待を込め、マックス超えの★7つ!!

世界を救うヒーローを目指す、SFエンターテインメントとしてのワクワクやドキドキだけでなく、「愛する人のため貴方はどこまで傷つくことができますか。」というキャッチコピーどおり、切なくなる物語も楽しめる本作。新人作家離れした筆致と物語の構成力を持つ、肘原えるぼ先生、そして『ふたりぼっち戦争』の今後をぜひ追いかけていきたい!

文章/ちゃんあり

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(C)肘原えるぼ/集英社