2017年7月26日(水)18時30分

【レジェンド作レビュー】週マが誇るメルヘン読み切りの大ヒット作! 川崎苑子『土曜日の絵本』“はなびし草(号泣)回”を朗読してみた。

集英社では、かなり昔の名作コミックもデジタル版で配信しています。今回ご紹介するのは、週刊マーガレット1979年17号から連載が開始された、川崎苑子先生の『土曜日の絵本』(全75話/全6巻)です。

週刊マーガレット_表紙

週マ1979年32号では表紙を担当。「夏休みはメルヘンの世界へ!」のコピーがカワイイ!!!!
当時の週マと言えば…『エースをねらえ!』『翔んでるルーキー!』『希林館通り』といった有名スポ根&ドラマチック路線。

その中で、『土曜日の絵本』は知る人ぞ知る名作としてキラッと輝いていました。週刊連載ながら、毎回(ほぼ)16Pの読みきりオムニバス形式。(『こち亀』のように、各話で完結していながらも、連載としても少しずつお話が進む)さわやかな高原の「風吹町(かぜふきちょう)」で、幼稚園を卒園しこれから小学校に入学する“直前”の4人組が出会い、少しずつ成長していくさまが描かれます。

こちら風吹町の丘の上からの風景
こちら風吹町の丘の上からの風景
主人公のミクちゃん
こちら、主人公のミクちゃん
おしゃまな女の子・かすみちゃん
おしゃまな女の子・かすみちゃん
洋品店のアイドル・ミチル君
洋品店のアイドル・ミチル君

あともう1人は、例えば3人のうち誰かがこんな感じでおっちょこちょいした時に

ヘイちゃん
ヘイちゃん

……口は動かさずに手を動かす系男子・ヘイちゃん

ヘイちゃん

影は薄いですが、誰がどうみても将来有望男子です。

彼らの織りなす日々の物語が、本当に「絵本」のようにつづられていきます。
どこからひらいても、コンペイトウのびんづめみたいにキラッキラしていて、
スッと甘く、そしてなつかしいお話――――

けれど、ただなつかしいのではなく、4話に1話ぐらい、ホロっとさせられます。仕事を含めて多くのまんがを読みますが、この作品は、本当にまずい…。「泣けるマンガ」戦闘力としては、トップクラスを誇ります。表紙と、キャラクターの説明を読んで頂いても全く想像がつかないと思いますが「エースをねらえ!」と同じ雑誌に載っていただけのことはあり、筋立てとしてはドラマチックです。さらに、誰も悪くない、誰も事件を起こそうなんてしないからこそ泣けるという…、とても不思議な作品です。むしろ今の若い人に読んでもらいたい! 若い人と言えば『ユーチューバー』(短絡的)。……ということで、今回はおすすめの1話を絵本だから朗読して『YouTube』にアップしてみることにしました

朗読したのはこちら「4ページ目は――はなびし草のお庭――」
「4ページ目は――はなびし草のお庭――」
●こちらから動画でご覧ください(音声も一緒にお楽しみくださいね)

はい。ご覧になっていただけましたでしょうか?
いかがでしたでしょうか。

1本の映画を観終わったあとみたいな気持ちになりませんか? 
ほんの16Pとは思えないドラマでしょう?

これが『土曜日の絵本』のすごいところ。もちろんほのぼのしたお話も、笑えるお話もたくさんあるのです。でも、小学生のころはまさに主役のミクちゃんばりに粗野で、読書感想文用の課題図書1冊読みきれなかった私が、このはなびし草のエピソードを読んで「…生きるとは!?」と、考え込みました。というか、フリーズしました。小学生脳だと処理しきれなかったのです。でもこの作品に小学生で出会えて、本当によかった!と思っています。

子どもならではの目線と、草木の香りと、さみしさを描きだす天才

『土曜日の絵本』は、背景の自然が本当にキレイで、パラパラと眺めているだけでも気持ちが柔らかくなっていくのが解ります。

『土曜日の絵本』_カラー
『土曜日の絵本』_背景_きれい

春の日のお庭。芽吹きを待つ木の枝ぶりが美しい。
夏の暑い日には、同じお庭も緑の影が濃くなります。

『土曜日の絵本』_夏_庭
『土曜日の絵本』

そうそう、日陰の芝生はひゃっこくていいですよねえ…! ああ、草原でゴロゴロしたい。
ちなみに川崎先生のご趣味はガーデニングで、ご自宅のお庭がまたステキなんですよ。

柿の木

芝生がキレイ。ゴロゴロできる。
よーく見るとあのテーブル…ヘイちゃんちにあるやつと同じな気がするし…。

ベンチ

ベンチには柿(秋にお邪魔したんです)。ミクちゃんがもりもり食べそうな、柿。

ベンチ_柿

「ここの家の子になりたい」と心の底から思いました。平野育ちには、高原に吹き抜ける風の爽やかさがたまりません。

それと、泣けるの源泉にある、子どもならではの「コントロールが効かないさみしさ」エピソードが、私たちの「あるある!」を突いてきます。例えば、お熱が出て、ちょっとだけ気弱になっているときに、お家の人が留守な時のさみしさ。

父子家庭のカスミちゃん

父子家庭のカスミちゃんは、病状を把握すると、ちゃんと自分でお熱をはかり、自分でお布団を敷いて寝るまではできるんだけれども…。

父子家庭のカスミちゃん_雨

こんな雨にも降られた日には、そりゃ不安になるよね。おとうちゃまがお仕事で帰ってこられないことも解ってるけれど、でも、「さみしい」の気持ちは止まらないんだよね。

あと、ささいなことでお父さんとお母さんがケンカしていた時、外に出たミクちゃんが見た風景がこちら。

外に出たミクちゃんが見た風景

ケンカしてる方は必死かもしれないけれど、放置されている側は…手持無沙汰なんですよ。しかも来週の授業参観日、ママに観に来てほしかったのに、ケンカされてもねえ…。

参観日当日_風景

参観日当日もこんなですよ。黒板見る気ゼロなんだから。

子どもって、大人の事情でやすやすと翻弄されるんですよね。さらに、子どもだから対処する実力もない。その「どうしようもない感じ」がやたらとリアルなのです。夏草の香りや、日差しの強さもセットで思い出します。おそらく「やらかしがちなお子様」だった方には、とても刺さるエピソードが満載。通勤通学の合間にもピッタリのショートエピソード集。あなたの心のデトックスにおススメです。

文章:編集スタッフM

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